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株式を対価とする吸収分割と有価証券届出書

こんにちは、渉外司法書士の草薙智和です。


従前は、株主が50名以上である上場会社(有価証券報告書提出会社)を分割会社、当該上場会社の子会社を承継会社とする吸収分割において、吸収分割の対価として、承継会社の株式を発行する場合、その発行価額が1億円以上であるときは、分割会社(「組織再編成対象会社」)の事前開示書面の備置き(「特定組織再編成発行手続」)の開始日までに、当該株式について有価証券届出書を提出しなければならない(金融商品取引法4Ⅰ②、2の2、同施行令2の2、2の4)、とされていました。

平成21年12月28日施行の金融商品取引法施行令の改正により、この有価証券届出書の提出は、吸収分割においては、分割型吸収分割を除き、不要とされました(同施行令2の2)。なお、同条の「その他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの」は、それを定める内閣府令が存在しない「空振り規定」とのことです。

組織再編成に係る開示規制の適用対象会社の範囲の見直し(PDF)


現在、かなりタイトなスケジュールで、上記のような会社分割を受託しており、有価証券届出書のことに気づいたときは、「効力発生日に間に合わない」と、一瞬、冷や汗をかきました。金融商品取引法は、やっぱり恐ろしいですねぇ


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。


<参考条文>

金融商品取引法
(組織再編成等)
第二条の二  この章において「組織再編成」とは、合併、会社分割、株式交換その他会社の組織に関する行為で政令で定めるものをいう。
2  この章において「組織再編成発行手続」とは、組織再編成により新たに有価証券が発行される場合における当該組織再編成に係る書面等の備置き(会社法 (平成十七年法律第八十六号)第七百八十二条第一項 の規定による書面若しくは電磁的記録の備置き又は同法第八百三条第一項 の規定による書面若しくは電磁的記録の備置きをいう。次項において同じ。)その他政令で定める行為をいう。
3 (略)
4  この章において「特定組織再編成発行手続」とは、組織再編成発行手続のうち、当該組織再編成発行手続が第一項有価証券に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、当該組織再編成発行手続が第二項有価証券に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合に該当するものをいう。
一  組織再編成により吸収合併消滅会社(会社法第七百四十九条第一項第一号 に規定する吸収合併消滅会社をいう。)又は株式交換完全子会社(同法第七百六十八条第一項第一号 に規定する株式交換完全子会社をいう。)となる会社その他政令【施行令2の2】で定める会社(第四条第一項第二号イにおいて「組織再編成対象会社」という。)が発行者である株券(新株予約権証券その他の政令で定める有価証券を含む。)の所有者(以下「組織再編成対象会社株主等」という。)が多数の者である場合として政令【施行令2の4】で定める場合(組織再編成対象会社株主等が適格機関投資家のみである場合を除く。)
二 (略)
三 (略)
5 (略)

(募集又は売出しの届出)
第四条  有価証券の募集(特定組織再編成発行手続を含む。第十三条及び第十五条第二項から第六項までを除き、以下この章及び次章において同じ。)又は有価証券の売出し(次項に規定する適格機関投資家取得有価証券一般勧誘及び第三項に規定する特定投資家等取得有価証券一般勧誘に該当するものを除き、特定組織再編成交付手続を含む。以下この項において同じ。)は、発行者が当該有価証券の募集又は売出しに関し内閣総理大臣に届出をしているものでなければ、することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するものについては、この限りでない。
一 (略)
二  有価証券の募集又は売出しに係る組織再編成発行手続又は組織再編成交付手続のうち、次に掲げる場合のいずれかに該当するものがある場合における当該有価証券の募集又は売出し(前号に掲げるものを除く。)
イ 組織再編成対象会社が発行者である株券(新株予約権証券その他の政令で定める有価証券を含む。)に関して開示が行われている場合に該当しない場合
ロ 組織再編成発行手続に係る新たに発行される有価証券又は組織再編成交付手続に係る既に発行された有価証券に関して開示が行われている場合
三  (略)
四  (略)
五  発行価額又は売出価額の総額が一億円未満の有価証券の募集又は売出しで内閣府令で定めるもの(前各号に掲げるものを除く。)
2 (以下、略)

金融商品取引法施行令
(組織再編成対象会社の範囲)
第二条の二  法第二条の二第四項第一号 に規定する政令で定める会社は、新設合併消滅会社(会社法 (平成十七年法律第八十六号)第七百五十三条第一項第一号 に規定する新設合併消滅会社をいう。)、吸収分割会社(同法第七百五十八条第一号 に規定する吸収分割会社をいい、当該吸収分割に係る同法第七百五十七条 に規定する吸収分割契約において、同法第七百五十八条第八号 ロ又は第七百六十条第七号 ロに掲げる事項があるものを締結したものその他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの【空振り規定】に限る。)、新設分割会社(同法第七百六十三条第五号 に規定する新設分割会社をいい、当該新設分割に係る同法第七百六十二条 に規定する新設分割計画において、同法第七百六十三条第十二号 ロ又は第七百六十五条第一項第八号 ロに掲げる事項を定めたものその他これに準ずるものとして内閣府令で定めるものに限る。)及び株式移転完全子会社(同法第七百七十三条第一項第五号 に規定する株式移転完全子会社をいう。)となる会社とする。

(組織再編成発行手続における組織再編成対象会社株主等が多数である場合)
第二条の四  法第二条の二第四項第一号 に規定する政令で定める場合は、組織再編成対象会社株主等(同号 に規定する組織再編成対象会社株主等をいう。次条から第二条の七までにおいて同じ。)が五十名以上である場合とする。

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コメント

草薙先生、こんにちは。
先日移動中にこの記事をみて、本当に金商法は怖ろしいなぁ、と改めて思いました。
最近弊所では、金商法に絡んでいないのですが、油断しているときこそ怖ろしいのが金商法なので、普段から勉強しておかないと、と思いました。
組織再編、Kuri先生からも少し伺いました。大変そうですが、頑張って下さい。

投稿: morimoto | 2010年4月30日 (金) 10時41分

morimoto先生、こんにちは。
コメントありがとうございます。

今回は届出義務が免除されるほうに改正されていたので、よかったです。

発行相手が1社なのに、有価証券届出書を提出し、その後も有価証券報告書で継続開示しなければならないというのは、以前から批判があったようですね。

この案件は、独禁法の改正でも助かっているので、ラッキーなタイミングだったと思います。

投稿: 草薙 | 2010年4月30日 (金) 13時25分

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