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債権者保護手続において貸借対照表を同時公告した場合の催告書の記載事項

こんにちは、渉外司法書士の草薙智和です。

合併等における債権者保護手続において、決算公告が未了であることなどにより、官報での合併等の公告の中に貸借対照表の要旨の内容(会施規188⑦等)を合わせて公告した場合(以下「同時公告」という。)、その会社の公告方法を官報で行うこととしているときは、この同時公告は、以後、決算公告として扱うことができるとされています(ただし、その会社が大会社である場合は、債権者保護手続における同時公告では、損益計算書の要旨の内容は公告されませんので、同時公告を決算公告と扱うことはできないと思われます。)。

この同時公告をした後、知れている債権者への個別催告をするときに、計算書類に関する事項として催告書に記載すべきものは、どのように考えるべきでしょうか?

これについて、同時公告の官報の掲載頁等(会施規188①イ等)を記載すれば、有効な催告となる、という見解もありますが、私見としては、公告と同様に、貸借対照表の要旨の内容を催告書に記載すべきと考えます。その根拠は、以下のとおりです。

まずは、条文を確認しましょう。

会社法施行規則
(計算書類に関する事項)
第百八十八条 法第七百八十九条第二項第三号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百八十九条第二項第三号の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項又は第二項の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの
イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁
ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁
ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十九号 イに掲げる事項
二~六 (略)
七 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容

柱書の下線の部分に注目してください。これは、公告の日又は催告の日のいずれか早い日、つまり、債権者保護手続の開始時を基準として、適用する条項を決定する、という趣旨であり、それにより決定された条項が公告及び催告のいずれにも適用されると考えられます。

よって、本事例においては、先になされた公告の開始時点で、決算公告が未了であるため、第7号が適用され、公告及び催告のいずれにおいても、貸借対照表の要旨の内容を記載すべきこととなると思われます。

なお、この点、相澤哲編著『立案担当者による新会社法関係法務省令の解説』106項においても、「債権者保護手続を開始する時の会社及び決算公告の状況に応じて」とされています。
また、弥永真生著『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則』1029項等においては、さらに端的に、「公告の内容と催告の内容との間に差があることは想定されていない以上、先になされるものの内容に合わせなければならない」とされています。森本滋・弥永真生編『会社法コンメンタール〈11〉計算等2』97頁においても同様です。

【2012/01/09追記:岩倉正和・佐藤丈文編著『会社法実務解説』458頁も同旨】

みなさんのご意見はいかがでしょうか?


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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01会社法務」カテゴリの記事

コメント

全くもって同感です!

投稿: K | 2010年10月25日 (月) 08時30分

Kさん
さっそく、コメントありがとうございます!
普段、私は同時公告はしない主義なのですが、他の専門家と共同ですすめている案件で本文のような論点が出てきました。今回は、なんとか催告書にもBS要旨を記載することにしてもらえました

投稿: 草薙 | 2010年10月25日 (月) 08時58分

こんにちは。

渉外についての質問を
うかがってもよろしいでしょうか?

先生のお感じになっている外国語で必須、
また今後有望と思われるものが
ございましたら、ご意見伺いたいです。

投稿: ? | 2010年11月 2日 (火) 15時35分

?さん、こんにちは。

ビジネスという意味では、やはり英語です。英語ができれば、どこの国の人ともやりとりができます。とにかく英語をビジネスレベルにすることが最優先だと思います。私もまだまだですが

その上でやるとすれば、経済や人口から見て、やはり中国語でしょう。ただ、中国人でもエリートはたいてい英語を話せると思います。

投稿: 草薙 | 2010年11月 2日 (火) 15時48分

はじめまして。

貸借対照表の要旨の公告について質問があります。

9/30決算の㈲甲が1/5に㈱甲に商号変更。
商号変更後の決算公告はしていません。
4/1付けで㈱乙と合併の予定(㈱甲が存続会社)。
2/15に合併公告+決算公告(同時公告)の予定。

同時公告の際の貸借対照表の要旨中に記載する甲の商号の記載は㈲甲なのか㈱甲なのか分からないので教えて下さい。

よろしくお願いします。

投稿: ちょんぱい | 2018年2月 2日 (金) 17時36分

ちょんばいさん、こんにちは。

貸借対照表の基準日である有限会社の商号によるのが自然であると思います。

この場合、「甲(年月日有限会社甲から名称変更)」などと付記するのが親切かと思います。

ただし、公告はやり直しがきかないので、念のため、管轄法務局に事前に相談されることをお勧めします。

投稿: 草薙 | 2018年2月 2日 (金) 18時08分

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